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- 2024.1.19
- 主催セミナー
北九州GXエグゼクティブスクール 第1回レポート
昨年12月12日北九州GXコンソーシアム設立により、GX成長に向けた号砲が鳴りました。本日は、施策の第一弾としてGXエグゼクティブスクールがスタート。「自社のGXの課題を自らの言葉で語れるようになる」をキーワードに、GXを自家薬籠中のものとし、その波を乗りこなし、今後北九州のGX成長を牽引していただく企業としてご活躍いただくことを期待しています。全6日、受講料10万円という、ディープな構成ですが、それだけに本気でGX課題に取り組む参加者の皆様の、熱い顔ぶれでのスタートとなりました。
最初に、北九州市産業経済局次世代産業推進課 大庭ロボット・DX推進担当課長より、挨拶がありました。
「このスクールにご参加の皆様は、既にグリーン成長を経営課題と認識され、情報収集されていることと思います。エグゼクティブの皆様の貴重な6日間を割いていただく。最新の知見をお持ちの講師陣が揃っておりますので、真っ新な気持ちで受講に臨んでいただき、GXをぜひものにしていただきたいと思います。また、毎回最後に交流会がございますので、参加者同士、講師の皆様との意見交換や質疑応答など、有意義な時間としていただきたいと思います。」
講義1-1GXとは何か
IGES 赤木 純子氏による、「GXとは何か」と題して、GXの概略、世界・日本の最新の状況を概括する講義からスタートしました。
赤木氏は、「GXについてはまさに今動いているところ。正解のない状況、自社だけではソリューションが見いだせない。講師はもとより、他社の方々の知見も吸収して、インスピレーションを得ていただければ」とのコメントを前置きして、講義を始められました。
1 GXとは何か
- 化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のこと。
- 炭素を減らす「人」「起業」「製品」が評価される時代、脱炭素が付加価値を生む時代に変革されていくこと。
2 GXが推進されているのはなぜか
- プラネタリーバウンダリー(地球の限界)の図は、研究機関が作成している科学データに基づくもので、地球の健康診断。成層圏オゾンの破壊は、大きな課題とされてきたが、世界的な取組によって改善され、緑のゾーン(限界値以下)に収まっている。世界的な取組が成功すれば、地球の持続可能性が向上する証明といえる。
- 気候変動については、CO2累積排出量と気温上昇量は正比例の関係にある。対策が進まなければ、10年ほどで閾値を超えてしまう。
- 2015年からは、サステナビリティの流れが加速し、化石燃料からの投資撤退(ダイベストメント)が加速。
- 2020年以降、カーボンニュートラルに国家としてシフトする動きが加速しているが、目標とあるべき姿には大きな隔たりがあり、「漸進的な対策」ではなく「変化」が必要。
- 若者のサステナビリティに対する当事者意識は高く、COP28のような国際会議にも参加が進んでいる。就職先の評価の一つとなっており、優秀な人材確保のためにもGXの取組は必要。
- 消費者の意識も変わってきており、エシカル(環境負荷)の情報開示が価格競争力となる時代が目前に迫っている
- 一方、サステナブル情報の開示については、ノウハウが確立していない。どの程度の費用をかけるべきかなど、経営者の悩みがある。
3 GXはどのように推進されていくのか
- 各国で大規模の投資が表明されている。果敢なGX投資によって、脱炭素は付加価値となり、新たな市場を生む。現実に、GX価値の取引市場はすでに存在している。
- GX製品の創出には、研究開発費やスケールメリット、需要創出などがコストとして加算されるが、政策による投資支援でコストが削減され、その一方でGXに配慮しない製品については規制等で炭素価格が付与され、価格の逆転が発生する。
- GX市場は、黎明期から過渡期へ向けて、投資、政策的誘導がなされている。キャッチアップしていくことが重要である。
講義1-2脱炭素経営概論
続いて、IGES 松尾 雄介氏による脱炭素経営概論の講義です。松尾氏は「この界隈では3年~5年で新しいキーワードが流行する。流行する意味不明のワードに踊らされず、その文脈を理解・解釈して、経営判断を間違わないようにお願いしたい」と前置きして、講義を始められました。(氏の著作「脱炭素経営入門」は本スクールの推薦図書となっています)
基礎認知 気候変動は社会の安定に対する重厚なリスク
- 日本では「温暖化」という言葉がまだ主流だが、世界では「気候変動」と言われ、環境にとどまらず幅広い分野の脅威として認知されている。
- 政治・経済の優先事項として、世界の政治・経済のリーダーが危機感に満ちたコメントを出している。
- 状況は「予防・防止」といったレベルから、「取り返しがつかなくなる前に軟着陸を目指す」という、差し迫ったレベルに来ている。
カーボンバジェットを問題の背景に据えると様々なものが見えてくる
- カーボンバジェットは、先進国がCO2排出量の削減目標を引き上げた背景
- 脱炭素の技術選択をする際に、何が今後残るのか、カーボンバジェットを背景におくと明白となる。例えば、高効率石炭火力発電は、5年前ごろまでは高評価だったが、脱炭素には適合しないため、輸出をやめることとなった。市場は激動しているとえる。ガス火力発電も、同様の道筋をたどるのではないか。
- 金融問題も、カーボンバジェットで動向が読み解ける。化石資源は、今後価値が下がる資産であることから、投資対象から撤退する動きが出ている。環境アクティビストだけでなく、金融ビジネスのロジックで、動きが起こっている。
- 今後は、財務諸表とおなじように、GHG排出量のScope3の情報開示が求められていく。
- 脱炭素経営の要諦は、変化の規模・速度の見極め。足元の基準・ルール・常識が「変化する」と心得ることが必要
気候変動問題を正しく理解する
- 日本のオフィスでは、気候変動問題は、「身につまされたもの」ではない。農業、屋外労働者は猛暑や線状降水帯の降雨災害により影響を受けているが、わがこととしてとらえるには限界がある。
- 先んじてCO2排出に取り組むにも、先行者が損をする「フリーライダー」「囚人のジレンマ問題」がつきまとう
- 個人や個々の企業の自発性に任せた対策には限界があり、政策発動となる。
- 気候変動が企業に影響を及ぼすまでには段階を踏むが、市場の変化として見えるまでの情勢、すなわち先行指標は見えにくい。
- CO2排出にコストがかかる世界が到来することが見込まれる。
- 安い再エネルギーの調達ができなければ、工場などの大型投資は海外に流れざるを得ない。
- ルールが変わる前に、先行指標をキャッチして、経営判断を行っていただきたい。
講義1-3 欧州におけるGXと事業機会
午後は、株式会社野村総合研究所 藤波啓氏、梶野真弘氏により、欧州の動きをメインに世界のDX・GXの潮流を講義いただきました。
米・中に次ぐ第三極となるための欧州の戦略
- 欧州は、データ連携によるスマートファクトリで、デジタルツインを実現、バーチャル工場のシュミレーションで実物の稼働前のカイゼン活動を実現
- 事例紹介 OPTITEX、BMW(シーメンス×NVIDIA),skywise
- デジタル経済圏形成のうごき
- 自動車業界におけるデータ共有のイニシアティブであるCatena-Xがスタート
- バッテリパスポート(BP)を皮切りに様々なユースケース、領域に展開予定
GXへの対応は、サプライチェーンへの「入場券」
- 従来の「品質」「コスト」「納期」による競争の前に、GXへの対応が最低限求められる。
- 製造製品ごとのエネルギー消費、CO2排出量の管理・報告が必要
ワークショップ1 シナリオ分析
講義のあとは参加者をチーム分けしてワークショップを実施しました。
TCFDのシナリオ分析について、現状把握、シナリオ選択、リスクと機会の検討、インパクト評価、対応策の検討、結果の共有の6つのステップに分けケーススタディを行います。
今回は現状把握~リスクと機会の検討まで実施し、各チームからの発表を実施しました。