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- 2024.2.23
- GX入門
ネガティブエミッション
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、様々なGHG排出量削減へ向けた取組が始まっています。一方、温室効果ガスを大気中から除去する技術の開発も進められており、「ネガティブエミッション技術」と呼ばれています。
「ネガティブ」というと何か消極的なイメージですが、とっても前向きな技術開発です。
ネガティブエミッション技術には下表の通り様々な種類があり、研究が進められています。
植林・再生林
ネガティブエミッションの代表的な例が植林・再生林です。新規エリアの森林化や森林の再生などの技術開発が進められています。具体的にはドローン等を使用したスマート林業による森林の適切な管理、早生樹・エリートツリーの開発などが挙げられます。
ちなみに、スギの木1本が1年間に吸収するCO2は約8.8キロだそうです。一方、一人あたりの年間CO2排出量は2022年度で1.17トンとの調査結果が出ており、その量を吸収するためには、およそ133本のスギの木が必要になります。
DAC
DACは「Direct Air Capture」の略で、大気から直接CO2を回収する技術です。一般的なDACは大気中のCO2を吸着剤を使って分離し、吸着剤からさらにCO2を分離させて回収します。回収されたCO2は地中に貯留されたり、リサイクルされたりしています。
DACは現在、多くの企業により開発が進められています。スイスのClimeworks社は、アイスランドに世界最大規模のDACプラントであるOrcaをすでに稼働させており、1年間で4,000トンのCO2回収能力を持っています。
ブルーカーボン
ブルーカーボンは藻場、浅場などの海洋生態系に取り込まれた炭素を指します。吸収源はマングローブ林やコンブやワカメなどの海藻、ヨシなどの塩性植物など、主に沿岸部の浅瀬の生態系があげられます。
近年ブルーカーボン生態系が急速に減少しています。ブルーカーボンを増やすために海藻などを人工的に植えて藻場を再生させたり、海藻を食い荒らすウニなどを取り除くなどの対策が行われています。日本は海岸線の長さが世界6位となっており、今後の動向が非常に期待される分野です。
まとめ
ネガティブエミッションの技術はコスト面などまだまだ課題が多いのも事実ですが、近年積極的に研究開発がすすめられています。CO2を回収する技術を競うコンテスト「XPRIZE Carbon Removal」も実施されており、イーロン・マスクがスポンサーとなり、賞金額はなんと1億ドルです。
カーボンニュートラル、1.5℃目標を達成するには今のままでは十分ではなく、画期的な技術革新が必要不可欠です。ネガティブエミッション技術には今後大きな期待が寄せられます。