温室効果ガスを発生させないため、地球環境に優しいGXなクルマとして注目される電気自動車(EV)ですが、今回その歴史を見てみたいと思います。

電気自動車の誕生

電気自動車の誕生については諸説あるようですが、1830年代と言われています。ガソリン車が誕生したのが1886年ですので、なんと50年以上も電気自動車の方が先輩だったんですね。
ただし、当時のバッテリーは1次電池で充電はできませんでした。充電が可能な2次電池を用いた電気自動車の1号機は、1881年にフランスのギュスターヴ・トルーベによって製作され、同年にパリで開催された電気の博覧会に展示されたそうです。これでも、まだガソリン車よりも5年前です。

ちなみに、電気自動車の3大要素と言える、自動車、バッテリー、モーターの起源は、以下と言われています。

自動車:1769年 フランスのキュニョーが蒸気三輪自動車「キュニョーの砲車」を発明
バッテリー:1800年 イタリアのボルタが銅と亜鉛と食塩水を用いた「ボルタ電池」を発明
モーター:1821年 イギリスのマイケル・ファラデーが電気エネルギーを運動エネルギーに変換

電気自動車の繁栄と衰退

1890年から1900年頃までにアメリカでは電気自動車は全盛期を迎えます。当時のガソリンや蒸気で動く自動車と比べ、電気自動車は静かで運転しやすく、臭い汚染物質も排出しないため、特に女性の間で人気が高まりました。1900年に開催されたパリ万博では19社63台の電気自動車が出展しました。アメリカでは発明王トーマス・エジソンもより優れた電気自動車バッテリーの構築に努めました。当時のアメリカでも大流行し、道路を走る車の約3分の1が電気自動車でした。

出典:U.S.DEPARTMENT OF ENERGY「The History of the Electric Car」
https://www.energy.gov/articles/history-electric-car

しかし1908年にT型フォードが発売されると、手頃な価格で手に入るガソリン車人気に火が付きます。すると1935年頃には電気自動車はほとんど見かけることはなくなってしまいました。

日本での電気自動車

日本で電気自動車の記述が登場するのは1900年の「ビクトリア号」が最初です。サンフランシスコの日本人会が皇太子のご成婚を記念して献上されました。ですが、この「ビクトリア号」試運転で走った際、皇居のお堀に落ちたという逸話が残されており、結局一度も皇太子を乗せて走ることはなかったそうです。
その後、いくつか国産の電気自動車は製造されていたようですが、やはりガソリン車に圧され姿を消していきます。

昭和に入ってからは日中戦争や第二次世界大戦などの影響で、ガソリンが統制され入手が困難になり、再び電気自動車が注目されます。そんな中、東京電気自動車の「たま号」が1947年に発売されます。東京電気自動車はその後、たま電気自動車、プリンス自動車工業と名前を変え、最終的には日産自動車と合併しています。

出典:日産自動車ホームページ「たま 電気自動車」
https://www.nissan.co.jp/HERITAGE/DETAIL/9.html

1950年代に入ると、今度は朝鮮戦争の影響でバッテリーが入手困難になり、また1954年にはガソリンの統制が解除されたことから、またもや電気自動車は衰退し再び姿を消してしまいました。

電気自動車の再興

2000年代に入ると、リチウムイオンバッテリーの登場によりバッテリ性能が向上し、これまで課題になっていた航続距離を延ばすことに成功します。そんな中、2008年テスラ社から「ロードスター」が発売されます。その後のテスラ社の快進撃はご存じの通りかと思います。日本でも2009年に三菱自動車から「i-MiEV」、2010年には日産自動車から「リーフ」が発売されました。その後には国内外の企業から多数の電気自動車が発売になっている事はご承知の通りです。

脱炭素、カーボンニュートラルと追い風が吹いている電気自動車ですが、普及に向けてまだまだ課題があります。

・車体価格:ガソリン車と比較するとまだまだ高額です
・航続距離:長距離走行が可能にはなってきましたが、まだガソリン車には劣っています
・充電時間:ガソリン車では数分で済む充填時間が、数時間かかってしまうケースもあります
・充電設備:充電スタンドなどのインフラ設備がまだ整っていません
・蓄電池のリサイクル:蓄電池のリユースとリサイクルの技術と体制の確立が急務です

課題(リスク)があるという事は、反面ビジネスチャンスがあると見ることもできます。これらの課題をクリアし、カーボンニュートラルな未来の実現のために、電気自動車の発展に大いに期待したいところです。