パリ協定では、平均気温の上昇を1.5℃以内の抑えることが目標とされていますが、実際のところ既に1.5℃近く上昇していることが報道されています。これは、すでに世界の農作物に影響が出ており、私たちの生活にも見える形で表れています。

 例えば、地中海地域における長期間にわたる高温と乾燥がオリーブの収穫に深刻な影響を与え、オリーブオイルの価格が歴史的な高値を記録しています。特にスペインのアンダルシア地域では、水不足が深刻で、貯水池の容量が25%にまで減少しているそうです。

 また、ブラジルやフロリダなどの主要なオレンジ生産地域では、異常気象が頻発し、特に干ばつや熱波が深刻で、これらの気象条件がオレンジの成長と収穫に大きな影響を与えているそうです。例えば、ブラジルでは記録的な高温と乾燥がオレンジの木にストレスを与え、収穫量が減少、ジュースと言えばぱっと思い浮かぶ「オレンジジュース」が姿を消し、かわりに「みかんジュース」の引き合いが増え、高騰しているというニュースも聞きます。

 直近では、梅が、不作により価格高騰しています。毎年、お気に入りの梅を取り寄せて、梅シロップや梅干しを漬けているのですが、価格が倍以上になっているものも。売っていればまだましで、農園さんの自家製品用に取り置きされている場合は、青梅の販売なし、ということも。原因は、梅の花の開花時期が早かったため、まだ受粉に活躍する虫出ておらず、受粉できなかったとか。

 平均気温の上昇が、経済に繋がっていることを如実に実感するニュースです。梅の場合は、梅干しや梅シロップとして出回る期間がまだ先なので、この夏からは梅干しの価格に目が飛び出ることになるかもしれません。

 さて、古代ギリシャの数学者で哲学者でもある、タレスという人物がいます。
 タレスは、自分が貧しいことを理由に哲学を役に立たないものであるとけなされると、天体についての知識を使ってオリーブの豊作を見抜いて、冬のうちに無けなしの金で手付けをうってミレトスとキオスにある搾油機を全部借り出してしまったのです。競争相手がいなかったので非常に安く借りることができました。そして、収穫期が来て、突如として大勢の人が一斉に機械を必要とするようになると、彼は自分の言い値で機械を貸し出して大儲けをしたそうです。

 なお、このエピソードは、アリストテレスの『政治学』に記載されています。経済活動には、気候への対応や時流の先を読むことが必要なのは、昔から変わらないようです。