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- 2023.12.6
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GX実現に向けた150兆円の巨額投資が動きだした #1再生可能エネルギー
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長政略
日本は2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言し、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。その中で成長が期待される14の重要分野が下記の様に選定され、それぞれに対する実行計画が策定されています。
- エネルギー関連産業
- 洋上風力・太陽光・地熱、水素・燃料アンモニア、次世代熱エネルギー、原子力
- 輸送・製造関連産業
- 自動車・蓄電池、半導体・情報通信、船舶、物流・人流・土木インフラ、食料・農林水産業、航空機、カーボンリサイクル・マテリアル
- 家庭・オフィス関連産業
- 住宅・建築物・次世代電力マネジメント、資源循環関連、ライフスタイル関連
「GX実現に向けた基本方針」の閣議決定
グリーン成長戦略を具体的に推し進めるにあたり、2023年2月、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つを同時実現にむけた「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました。これを受け、今後10年間で官民合計150兆円にのぼる巨額投資が動き出します。今回の決定にあわせて、主な投資分野についての「道行き」と官民投資額の概算額についても提示されています。内容について下記の表にまとめました。
※経済産業省「GX実現に向けた基本方針参考資料」から作成
https://www.meti.go.jp/press/2022/02/20230210002/20230210002_3.pdf
GX投資のキーワード
GXの目的は「カーボンニュートラルの実現」と「産業競争力の強化」の同時実現です。今回閣議決定された今後10年間の150兆円の巨額投資ですが、下記の5つのキーワードとしてピックアップしました。
これらのキーワードを意識すると、GXに関するビジネスチャンスを掴む近道になりそうです。この5つのキーワードをベースに、それぞれの現状・動向も併せて、詳しく見ていきたいと思います。
再生可能エネルギーの現状
早速、1回目は再生可能エネルギーについて見ていきます。
日本の再生可能エネルギーの比率は、2020年度時点で19.8%に留まっており、まだまだ77%は化石燃料に依存しています。CO2の排出量についても全体の約41%が電力由来のものとなっていて、カーボンニュートラル実現のためには、化石燃料依存からの脱却が喫緊の課題です。エネルギー自給率も非常に低く、ほとんどが海外からの輸入に頼っている状況で、近年の世界情勢不安からのエネルギー小売価格の高騰などのエネルギーの安定供給面からも、再生可能エネルギーへの転換は非常に重要です。また、化石燃料が採掘できる可採年数は、石油、天然ガスについては今のままの生産量では約50年と言われており、供給の観点からも化石燃料からの転換が急がれます。
現状、再生可能エネルギーの構成は太陽光が7.9%、水力が7.8%と比較的多く、続いてバイオマスが2.9%、風力、地熱はそれぞれ0.9%、0.3%とごくわずかになっています。
2030年に向けた目標
2030年までに再生可能エネルギー比率を36~38%(16%~18%増)まで引き上げ、逆に化石燃料の比率を41%程度まで引き下げる方針を出しています。ガソリン車からEV車への転換に代表されるように、今後ますます電気の全体使用量の増加が見込まれますので、目標達成のためには、再生可能エネルギーの大幅な増強が必要になると思われます。
構成比率では太陽光が14~16%(6~8%増)、水力11%(3%増)、バイオマス5%(2%増)、風力5%(4%増)、地熱1%(1%増)となっており、太陽光と風力、バイオマスが特に注力されるようです。
太陽光発電
太陽光発電の分野では、次世代型太陽光の技術開発・実証が行われており、2026年からの量産・普及を目指しています。
その中でもペロブスカイト太陽電池は、軽く、薄く、柔らかい形状で、かつ比較的安価に製造できることから次世代型太陽電池として大いに期待されています。従来の太陽光発電は設置できる場所が限られており、メガソーラー施設に代表されるような、森や林を切り開いて設置するケースも多く、カーボンニュートラルの観点からはCO2の発生量を抑制するために吸収源が減少するといった、非常にちぐはぐな対応になっているケースが散見されました。ペロブスカイト太陽電池は、いままで設置できなかったビルの壁面や屋上、さらには自動車の車体などの局面の部分にも貼り付けることが可能になり、大幅に設置場所を増やすことが可能となり、より一層の普及が期待されます。
次世代型太陽電池が実用化するまでは、従来型の太陽光発電の需要がまだまだ伸びることが予想されます。GX投資の対象としても公共施設、住宅、工場・倉庫、空港、鉄道などへの設置が想定されています。大型ホームセンター等の駐車場の屋根への設置は、雨の日などの買い物客への利便性向上も同時に図れるため積極的に進められているようです。
一方、従来型の太陽光パネルの寿命は20年程度とされており、2030年代後半に廃棄のピークが来ることから、回収・リサイクル等の準備を進めておくことも非常に重要です。
風力発電
風力発電は、2020年から2030年までに電源構成比で約5倍に増やす計画になっています。2020年時点で日本国内の風力発電の導入数は約2500基あり、各所でかなりの数の建設ラッシュが始まっています。風力発電は一定の風が安定して吹く場所が必要で、また風車が回ると低周波音や機械音が発生し騒音問題が発生する可能性があることから設置場所が限られており、近年では海洋上に設置する洋上風力発電へのシフトが始まっています。北九州市でも響灘沖の洋上風力発電所「北九州響灘洋上ウィンドファーム」の建設工事が2023年3月から開始され、2025年度の運転開始を予定しています。
風力発電施設は定期的なメンテナンスが必要で、毎月1回以上のメンテナンスが国により定められています。非常に大きな施設ですので陸上の設備でもメンテナンスが大変ですが、洋上となるとさらに難しくなりそうです。そこでドローンによる撮影とAIによる画像処理を組み合わせた、効率的な外観検査なども運用が始まっており、この分野についてもさらなる需要が見込めそうです。
風力発電施設も寿命は約20年といわれており、今後毎年100基程度が耐用年数を迎える予定であり、建て替え、撤去への備えが併せて必要です。
バイオマス発電
バイオマス発電は、動植物由来のバイオマス燃料を使って発電する方式です。発電方式はバイオマス燃料を直接燃やす方式や、ガス化してから燃焼させる方式等がありますが、基本的には火力発電の一種です。バイオマス燃料の具体例としては樹木、作物、動物油脂、都市ごみ、農林業系の廃棄物などがあげられ、現時点では樹木や廃棄物が多く用いられています。
本来環境にやさしいはずのバイオマス発電ですが、現状ではその燃料の多くを輸入に頼っており、輸送時のトラックやタンカー等からの温室効果ガスの発生や、原産国での過度の森林伐採などが発生しており、バイオマス発電普及の最大の障壁になっています。バイオマス発電自体は資源循環の観点からは非常に良い仕組みですので、国内で発生する間伐材や建築現場の端材、竹などを効率的に確保し、輸入資源に頼らずにバイオマス燃料を賄うようなサプライチェーンの構築が必要です。
その他の発電
水力、地熱による発電については、設置する場所への制約や、設置に向けての環境負荷が大きいため、近年は開発があまり進んでいません。
再生可能エネルギーの研究開発は他にも進められています。たとえば海の力を利用した海洋発電は、海の満ち引き(潮汐)、波の上下動(波力)、海流の流れ(潮流)を活用、また海面の水と深海の水の温度差を利用した海洋温度差発電などが研究されており、海に囲まれた我が国では今後注目すべきエネルギー源になりうるのではないでしょうか。さらに、面白いところでは微生物を使った微生物燃料電池などなど、様々な研究が進められています。
今回は第1回目として「再生可能エネルギー」について見てきました。
次回は「蓄電」について見て行きたいと思います。
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