カーボンニュートラルの実現に向けて、日本政府は企業にGX対応を求めつつ、GX対応製品・サービスに先行投資するとしています。企業間でも、GX対応を求められる機会が増えています。消費者もGX対応企業を支持するようになってきています。行政、企業、消費者を巻き込んで全体として取り組んでいくことで、新しい市場を生み出そうとしています。

日本政府は、官民合わせて150兆円超の投資をはじめとするGX政策を可能にするため、2023年5月にGX推進法1を公布し、同年6月に施行しました。

目玉政策のひとつに成長志向型カーボンプライシング構想2があります。カーボンプライシングとは、企業などの排出するCO2(カーボン、炭素)に価格をつけ、それによって排出者の行動を変化させる政策手法のことです。GX推進法の下、排出量取引制度が2026年から本格的に始まり、化石燃料賦課金が2028年から導入される他、GX経済移行債を原資にGX投資が進められることになっています。これらを実践することで、GX対応製品・サービスが価格競争力をもてるようにする、さらに啓発なども合わせて展開することにより、GX対応企業や製品・サービスが選好されるような市場を作り出そうとしています。

企業間でも、取引先との間で対応を求められる機会が増えています。サプライチェーン上の海外企業からある日突然情報開示を求められる、あるいは国内の大企業からサプライチェーン排出量の削減に協力要請が来る、といった話はもはや珍しいことではなくなってきました。

さらにSDGs3の広まりも相まって、消費者の間ではエシカル消費(論理的消費)4に賛同し、対応企業に好印象を持つ人が増えています。まだ具体的なアクションが取れていない人であっても、どれが環境負荷の少ない商品かが分かれば、そして価格競争力が出てくれば買いたいと考えている人達は潜在的にたくさんいるようです。5

そうした変化を予見し、前向きに対応していくことで、より多くの機会獲得に繋がります。

  1. 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和五年法律第三十二号). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=505AC0000000032.  
  2. 「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)」(2023年7月28日、閣議決定)参照。(出典:GX実行会議. https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/index.html) 
  3. 持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)とは、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までの国際目標。
  4. エシカル消費とは、消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと。(出典:消費者庁. “エシカル消費とは”. https://x.gd/cK1Dd. 参照 2024-03-27)
  5. ボストン コンサルティング グループ. “第7回サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果”. 2023-09. https://web-assets.bcg.com/e3/18/cf7b607a4032bdfdf3afbf4b072d/jp-sustainability-survey-sept-2023.pdf. (参照 2024-03-27)